人の付き合い
今朝の日本からのメール。以前住み慣れた東京の家の隣のご主人からだ。日本滞在中の長男を、夕食会に招いて下さったそうだ。ずっと予定が詰まっていた長男。離日間際の今日ようやく、訪ねる機会ができたらしい、、、そして同じメールに、懐かしいご家族の近況が、、、。
子供達が幼かった頃、住み慣れた東京の神楽坂の住宅街。10年間、慣れ親しんだ場所だ。ご近所は家族以上の家族になってしまった。我が家の4人組が、日常的にお世話になり、可愛がってもらったお隣や近所の家族もいる。その中に、、、
自宅から徒歩数分の場所に、雑貨や日用品などを売っている通い馴れたお店があった。ご夫妻とその娘さんと息子さん。時々そのおばさんも見かけたが、、、。毎日夜遅くまで、家族一緒に一生懸命働いていた様子が今でも目に浮かぶ。
当時まだ幼かった我が家の4人組。母親不在の昼間には、隣のおばさんの買い物に良く連れていってもらったらしい。その帰り際、アイスクリームや小さなお菓子などを手にする。隣のおばさんが買ってくれたり、時々お店のおばさんやおじさんから頂いたりもしたようだ。
当時の我が家、母親は仕事で夜遅く帰ることはしょっちゅうだった。夜10時頃、電車に乗る前に自宅の子供達に電話を入れる。最寄の駅から自宅まで徒歩6分歩ほどの距離。母親の帰宅時間が待ちきれず、外で待っていた4人組。そのうち、だんだんと駅の見える場所まで4人で移動した。
たいていは、角にあるそのお店の前で立つことに。冬の寒い時期、夜遅く外で立っている子供達。今か今かと、駅の方面を見ながら母親の到着を待っている。それを見かねて、暖かいお店の中に招き入れてくれるおじさんやおばさんなど。
外に母親の姿が見えると、店から突然飛び出してくる子供達。事情を知らない母親の私は思わずビックリ。店の中で、ニコニコしているおばさん。彼女に招かれ、また店の中に戻る我々親子。おばさんにお礼を言い、その場を去ろうとする私の手に、何気なく大きな袋が渡される。
袋一杯に入れてあるのは食料品。思いがけない袋の中身に慌てる私に、おばさんの一言。「残りものだから食べて、、、」
袋の中味は、パンやお菓子や時々おにぎり、、、。決してその日の売れ残りのものばかりではないのは、中身を見ればすぐわかる。時間に追われ、買い物もままならない我が家の事情を察してか、私に気遣いをさせないよう、さりげないおばさんの心遣い。
レジ台の下から、ソッと袋を渡してくれるおばさんの手。家族のために苦労して働いたシワが刻まれている。でもそんな事、何も言わないおばさんの顔。いつも優しく温かさだけが伝わってくる。私の疲れを癒しに変えてくれたのもおばさんだ。
店から自宅までの数分間、頂いた袋を手にし、子供達4人で手をつなぎながら歩く。その間、我々親子が周囲に支えられていることを実感し感謝した。夜遅く、幼い子供達の嬉しそうな顔を見ながら、家族一緒のつかの間の幸せを感じていたものだ。
お店で一生懸命働いているこのおばさんとその家族全員。皆、人情と優しさに溢れていた。
店のお客さんに媚びることなく、この家族皆の人柄がそのまま近所の人達を引きつけていたようだ。その近所の中に我が家もいた。
隣のおばさんと一緒に、通いなれたこのお店。10年前に、我が家が日本を離れてからご無沙汰だった。その間、隣のおばさんが時々近況を入れてくれていた。娘さんが結婚した事などの朗報だった。
毎年、日本に戻るたびに懐かしい故郷、神楽坂に立ち寄る我が家。隣のおばさん宅に行く途中にあるこの角のお店。以前のおばさんは、体調を崩し、店に姿も見せなくなった。でも、まだご主人やその息子さん達から、その様子を聞いていた。
そして今日、隣のご主人からメールで、近いうちに千葉に移転される事を知った。あの懐かしいお店が、その後どうなるのかはわからない。でも、お店の家族はもう同じ場所にはいなくなるそうだ。
お店の移転を前に、我が家にと託してくれたものがあるそうだ。すっかりご無沙汰している我が家にまで、心遣いをしてくれるこの家族。お世話になったお礼だそうだ。お世話になったのは我が家の方。こちらが恥ずかしくなるほどだ。お礼の言葉も見つからない。
今回の日本滞在時、なかなか時間がとれずにいた長男。離日間際の今日ようやく、隣のおばさん宅を訪ねることになったそうだ。夕食に招いて頂いたそうだが、また彼の気持ちもまた癒される事だろう。
20年前からの10年間、東京の真ん中で我が家の4人組は生まれ育った。近所や地域の人達の愛情を日常的に与えてもらった場所である。そこで、人の温かさを十分味わう事ができた子供達。母子家庭の寂しさや核家族の孤独など、、、日常的に感じる事もなく過ごすことができた。
夫がいなくなってから、母親一人になったけど。周囲の人達の愛情に我が家の4人の子供達は守られていた。
我が家の4人組の子育ては、決して母親一人でやれたわけではないのを知っている。
隣近所の人達の温かい愛情に支えられながら気がつくと、近所で大きな「家族」を築いていた。
日本を離れて10年以上、毎年日本へ戻るたび、必ず足が向くのは懐かしい場所。懐かしい大きな「家族」がいるからだ。大きくなった子供達を、以前と変わらず温かく迎えてくれる人達がそこにいる。
思いがけず、隣のご主人からのメールで知ったお店の移転。その家族のいまだに変わらぬその心遣いや温かさ。日本にいる長男宛てに託してくれたそうだ。我が家の動向を知らせてくれる人達もいる有り難さ。
本物の温かさを持った人達は、時間を経てもどこにいても、本質的には変わることはない。
人のつき合いは、お互いを「温め合う」ことを忘れない限りつながれていくものだ、、、と、つくづく思う。
Posted by ka1003 at 23:09
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